システムエンジニアリング概要

ここでは、システムエンジニアリグの概要について説明しています。

言葉の定義

ここでは、システムエンジニアリングに関する言葉の定義をします。

まずは、「システム」の定義です。
「システム」という言葉は大変よく使われます。しかし、その定義というのは人によりことなっていることが多々あります。ここでは、世界標準から2つの定義を紹介します。

まずは、INCOSEというシステムエンジニアリングの国際団体が作ったシステムエンジニアリングハンドブックにおける定義から紹介します。そこでは、システムはこのように定義されています。

「システムとは、定義された目的を成し遂げるための、相互に作用する要素(element)を組み合わせたものである。これにはハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、人、情報、技術、設備、サービスおよび他の支援要素を含む 」

システムというと、ハードウェア、ソフトウェアなどのみを想像することが多いのですが、国際的には、人やサービスなども含めてシステムとよんでいます。

もうひとつ、最も有名なシステムエンジニアリング標準であるANSI/EIA-632における定義を紹介します。

「システムとは、与えられた目的を達成するための最終成果物(End Product)と補助的成果物(Enabling Product)の集合体である」

ここにおける最終成果物と補助的成果物の説明をします。
世界標準であるANSI/EIA-632によると、システムは、最終成果物と補助的成果物から構成されます。ここでいう最終成果物とは、通常、われわれが開発しようとしている対象物です。車を開発するのであれば、車が最終成果物です。では、補助的成果物とは何か。これは、開発のライフサイクルを念頭において考える必要があります。
開発のライフサイクルの最初は、「設計」です。補助的成果物に含まれる最初の成果物は、「設計補助成果物」です。もし全く新しい製品、例えばタイムマシンを開発するとします。このとき設計に必要なものはすべてもっているとはかぎりません。もしかしたら全く新しい開発環境が必要かもしれません。そのときは、この開発環境自体が設計補助成果物となります。また、各種仕様書や設計書も作る必要があります。これらも設計補助成果物含まれます。 ソフトウェア開発では、まず開発環境をそろえるところからはじめます。こういったものが設計補助成果物です。設計の次は、製造です
。製品を製造する場合、製造装置の開発をする必要がある場合があります。こういった場合には、製造装置は、製造補助成果物となります。あるいは製造手順書を作成する場合、これも製造捕縄成果物にあたります。 次ぎは試験です。製品を試験するために試験装置の開発をする場合があります。こういった場合、試験装置が試験補助成果物にあたります。試験規格書なども含まれます。
次は、製品を使用するところまで移動します。専用のコンテナあるいは梱包材が必要となることがあります。これらは移動補助成果物です。
次に行われるのが、利用者のトレーニングです。もちらんトレーニングが不要なものもありますが、必要な場合もあります。この場合、トレーニングの教官やトレーニング教材がトレーニング補助成果物にあたります。
次に利用です。利用の場合、マニュアルがいります。これが利用補助成果物にあたります。
最後に必要なのが、廃棄補助成果物です。特に原子力製品のようなもの、毒性の高い物質を利用したものでは、廃棄するための仕組みも開発しなければいけません。これらすべて補助的成果物です。このように補助的成果物にはライフサイクルにあわせて7種類あるのです。
以下にシステムを構成する成果物を示しました。

システムの構成

もうひとつ、システムの重要な概念を説明します。それはシステムの階層構造です。ANSI/EIA-632ではBuilding Blockと呼ばれています。
上述したとおり、システムは最終成果物と補助的成果物から構成されています。では、その最終成果物は何か。もちろん複数のサブシステムから構成されているのです。このうち一つのサブシステムに注目してみます。サブシステムといっても色々なレベルのものがあります。しかし、通常このサブシステムでさえ、複数のものの組み合わせで構成されているのが通常です。こういった場合、このサブシステムをひとつのシステムとみなすことができるのです。 このようにシステムとシステムをあわせてシステムになるという考え方を「Building Block」と呼ぶのです。 下にこのBuilding Blockのイメージ図を示します。

Building Blockの考え方

「システムエンジニアリング」という言葉の定義を説明します。
ここでも2つの定義を紹介します。

まず一つ目は、オーストラリアのプロジェクトパフォーマンス社の定義です。この会社は世界中でシステムエンジニアリングの教育を行っている会社です。ここでは以下のように定義しています。

「システムに関わる工学を実施するための技術分野には依存しない仕事の仕方」

技術分野には依存しないという定義に特徴があります。システムエンジニアリングがすべてのエンジニアに役に立つと言われているのはこのためです。もちろん、システムエンジニアリングを知っているだけでは、例えば電気設計のエンジニアや機械設計のエンジニアはだめかもしれません。しかし、彼らもシステムエンジニアリングを知っていることは役に立つのです。
また、先ほどと同じくINCOSEのシステムエンジニアリングハンドブックでは、以下のように定義しています。

「システムの実現を成功させることができる複数の専門分野にまたがるアプローチおよび手段 」

ここで、成功という言葉に注意ください。製品が開発できたら成功ではありません。成功とは、与えられたコストと納期を満たした上で、必要な品質の製品を作り出してはじめて成功なのです。
以上で、言葉の定義は終わりです。ここでは、「システム」と「システムエンジニアリング」という言葉の定義を紹介しました。

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