要求分析
ここでは、システム設計プロセスの中の一ステップにあたる要求分析について説明しています。
ISO15288 (JISX0170)における要求分析プロセス
もう一つの世界標準であるISO15288では、要求分析および要求評価は以下のように位置付けられています。
このISOには、日本語版にあたるJISX0170がありますので、英語が苦手な方はJISXを参照されることをお勧めします。
ここでの説明もJISXを元にしております。
ISO15288では、要求分析は「テクニカルプロセス」の中の「利害関係者要求定義プロセス」と
「要求分析プロセス」から構成されています。
「利害関係者要求定義プロセス」とは、以下のようなプロセスとして定義されています。(出典:JISX0170)
目的
定義された環境において、利用者及び他の利害関係者が必要とすされるサービスを提供できるように、あるシステムに対して要求を定義することを目的とする。
成果物
- サービスで要求される特性及びサービスで要求される利用のコンテキスト(内容、状況、背景)が明記されている。 システムソリューションにおける制約が定義されている。
- 利害関係者の要求から、利害関係者及び利害関係者ニーズへの追跡可能性が樹立されている。
- システム要求を定義するための基礎が記述されている
- サービスの適合の妥当性を確認するための基礎が定義されている。
- サービス又は製品を供給するための交渉及び合意のための基礎が提供されている。
- 個々の利害関係者及び利害関係者クラスの特定
- 利害関係者要求事項を聞き出す
- 合意・マネジメント/技術の不可避の解決の制約の定義
- 全ての要求サービスに対する代表的組合せの特定
- ユーザ及びシステム間の相互作用の特定
- 健康・安全性・セキュリティ・環境・利害関係者要求事項・クリティカル品質に関係する機能の規定
- 聞き出した要求事項の完全な組合せの分析
- 要求事項問題の解決
- 利害関係者への要求事項フィードバック(必要性・期待)
- 利害関係者と一緒に要求事項が正しい表現の確立
- 要件マネジメントに適した形での要求事項の記録
- 利害関係者の必要性ソースまでの要求事項トレーサビリティ維持
「要求分析プロセス」とは、以下のようなプロセスとして定義されています。(出典:JISX0170)
目的
利害関係者の要求の視点を、これらのサービスが提供できる要求製品の技術的な視点に変換する。
成果物
- 製品ソリューションの要求の特性、属性、機能/性能要求が明示されている。
- システムの方式設計及びそれを実現する手段に影響する制約が明示されている。
- システム要求から利害関係者の要求へのリスク抑制のための完全性及び追跡可能性が樹立されている。
- システムの機能的境界の定義
- 各機能の定義(オペレータを含むシステムの機能の作動、機能の実行条件、開始条件、終了条件)
- 利害関係者要求事項、不可避の実装制約事項の定義
- 技術的達成評価を可能とする技術/品質の尺度の定義
- 健康/安全性/セキュリティ/信頼性/有用性/支援性等の重要な品質に関するシステム要求事項/機能の特定
- 完全性(一意的、抜けがない、曖昧でない、矛盾がない、実装可能、検証可能)の解析
- システムと利害関係者の要求事項間の追跡可能性の実証
- システムライフサイクルを通じて、理論的根拠/決定/前提条件と合わせてシステム要求事項を維持
ちなみに、ソフトウェアエンジニアリングのプロセス標準としてISO12207があります。 このISO12207とISO15288との関係は以下のようになります。